イオン、65歳に定年延長 賃金変わらず、昇格も可能

12月26日8時0分配信 産経新聞
 流通大手のイオンは25日、来年2月21日に社員の定年を現行の60歳から65歳に延長すると発表した。大手企業が定年を延長するのは極めて珍しい。60歳をすぎても職務が変わらなければ賃金などの条件は変わらず、昇格も可能。2、3年後にはグループ60〜70社程度に拡大する考えで、定年延長制度が広がる可能性も出てきた。
 新制度では、定年前と同じ雇用形態でそのまま定年を延長できるほか、勤務地を固定した上でフルタイムで働くか、短時間で働くかを選択できる。パートタイムにも65歳までの雇用が適用される。同社の従業員数は約12万人(社員約1万5000人、パート約10万5000人)。初年度の対象者は社員で年間約240人、パートで約5700人に上るという。
 同社は今年2月、社員向けに再雇用制度を導入。いったん定年退職した後、1年ごとに契約を更新しながら雇用する制度を導入したばかりだったが、「(定年延長で)これまで培ってくれたイオンの精神を若い従業員に継承してくれる効果は大きい」(井元哲夫常務執行役)と判断。定年延長の導入を決めた。また、同社は年功制を廃止し、職務・職位に応じた賃金制度を導入しており、定年延長しても人件費が大幅に増加しないことも後押しした。
 今年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、企業は(1)65歳まで定年延長(2)定年退職後の再雇用(3)定年廃止−のいずれかを採用しなければならない。しかし、大手企業の大半はコストの負担を懸念し、再雇用制度を採用しているのが実情だ。
 富士電機ホールディングスは他社に先駆け平成12年に定年延長を選択できる制度を導入した。ただ、定年延長を希望する社員は退職者の1割に満たないこともあった。「老後は余裕のある人生を送りたい」と考える人も少なくないことが背景にあり、退職時期を選べるようにするなど制度を見直している。
 一方で、厚生年金の支給時期が段階的に引き上げられ、生活への不安を持つ人が増加。昨春から定年延長を導入した川崎重工業では「今年の定年対象者の7割が定年延長を選択した」(同社)という。老後の安定雇用を望むニーズは高まっており、企業は高齢者雇用で幅広い選択肢を用意する必要がありそうだ。
最終更新:12月26日8時0分
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