民主党の最低時給1000円構想、企業のコスト配分に変動も

7月23日16時31分配信 ロイター
 7月23日、株式市場では総選挙後の民主党(写真)政権誕生を織り込む形で想定される政策を先取り買いする動きが目立つ。7日撮影(2009年 ロイター)
 [東京 23日 ロイター] 株式市場では総選挙後の民主党政権誕生を織り込む形で、想定される政策を先取り買いする動きが目立つ。ただ、産業界すべてが政権交代でバラ色になるわけではなく、ネガティブな要因も指摘されており、とりわけ最低賃金法について全国平均で最低時給を1000円にするとの点が企業関係者の間に波紋を広げている。
 外食や小売りなどの内需型産業では、労務費の上昇を価格転嫁する動きが想定される一方、輸出型産業については空洞化を招くとの見方もあるなど、広い意味で企業のコスト配分に大きな変動をもたらすことになりそうだ。
 子ども手当て、介護、農業と民主党の政策が実現することを見越して関連銘柄を物色する動きが出ているが、月内に発表が見込まれる民主党マニフェストを株式市場のテーマとして考えた場合、ポジティブな材料ばかりではない。中でも産業界に大きな影響を及ぼすとみられるのが、一部報道で盛り込まれるとされる最低賃金を全国平均で時給1000円にするという数値目標だ。
 確定したマニフェストが公表されていないため、2007年に行われた参議院選挙の前にまとめた最低賃金法の民主党案についてみると、全国最低賃金は約800円を想定、各地域の地域最低賃金は全国平均で1000円を目指し、施行後3年間で段階的に引き上げる──と明示されており、これが今回のマニフェストにそのまま記載されても、すぐに最低時給が1000円になる様子ではない。しかし、実際に法制化された場合、企業は時給引き上げを迫られることになり「対処するのは現実のものになってからだが、最低時給1000円が法律になった場合は従わざるを得ない」(ある外食企業の広報担当者)ことになる。
 影響が大きいとみられるのが、アルバイトやパートを大量に雇って店舗運営を行う外食やコンビニなどの小売業だ。業界関係者の間では、収支ギリギリでビジネスを行っている企業にとっては、1000円までの引き上げはもちろん、800円─900円への引き上げでも苦しいところが出てくるとの見方が広がっている。
 外食大手の吉野家ホールディングス<9861.T>の広報担当者は「当社はもともと平均時給が1000円くらい」と前置きした上で「あくまでも1000円くらいというのは平均値で、地域事情でそれ以下の金額となる店舗も多い。かりに、最低時給が1000円となれば、全体の賃金支給額は上昇することになる」と話す。
 また、コンビニ大手のローソン<2651.T>の広報担当者も「最低時給が1000円となれば、影響が出てきそうだ」とコメントしていた。ローソンでは、時給について一律に提示することはなく、地域の事情に応じてFC加盟店の裁量によって店ごとに異なる。フランチャイズ・チェーン店の場合、ローソンと同様のケースが多く、店舗ごとに時給を設定してコストを管理することになるが、労務費の上昇によって加盟店の収益が悪化、最終的に影響が本部に波及することは想像に難くない。
 ある専門店の関係者は「アルバイトも職務内容やスキルによって時給に差がある。かりに、スキルの高い人の時給が1000円だとして、ノウハウの無い人が同じ時給に引き上げられたら、スキルのある人の時給も上げざるを得なくなるなど、平均賃金が確実に上昇しそうだ」とコメントしていた。
 製造業も厳しい対応を迫られることになる。「製品の需要が減り工場の稼働率が落ちている現状で、1000円どころか時給を上げられる状況ではない」(ある中小部品メーカーの社長)という。
 中京地区で自動車関連製品を製造する中小企業のオーナーは「トヨタ自動車<7203.T>やホンダ<7267.T>など親会社が、時給引き上げに対応した単価で購入してくれれば問題はないが、そのようなことにならないのが現実だ。最低時給が1000円となったら、廃業するしか道はなくなる」と胸のうちを明かす。
 前出の中小部品メーカーの社長も「コストが上がれば国際競争力がなくなるため、海外に生産拠点を移す動きが再び加速するのではないか」と指摘するなど、国内産業の空洞化に繋がることも懸念されている。
 一般的に企業は、ある部分のコストが上昇した場合、企業努力によってトータルでは抑制しようとする。昨年までの原燃料費高騰の際もこうした動きが各産業でみられたなど、企業のコスト配分に影響を及ぼした経緯があり、実際に時給が引き上げられた場合も、工場の海外移転なども含めて大きな変動を起こす可能性が高い。
 企業努力で吸収し切れない時は「時給が上がった分を価格に転嫁するケースも出てくるのではないか」(吉野家ホールディングスの広報担当者)との声も出ていた。
 (ロイター日本語ニュース 水野文也)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090723-00000837-reu-bus_all

たとえば時給800円で10人雇っていたとする。
企業にとっては「10人の人手が必要で、予算が1時間に対して8000円」ということだ。
これが法律で時給1000円で雇えとなったとする。
その趣旨としてはもちろん「企業はがんばって10000円払えよ」なんだろう。
10人でがんばらなければこなせない仕事だったのだろうから、企業はなんとか10000円払いたいところだ。
だが企業だってぎりぎりの戦いをしている。
そう簡単に予算の2000円アップを受け入れるわけにはいかず、なんとか8人で済ませるような努力を当然することになる。
努力の結果もしそれができてしまったら、8人にはいい条件になるかもしれないが、予算は8000円だから、2人に泣く泣く終わってもらうことになる。その2人は失業だ。
いや、場合によっては、1000円出すんだったらもっといい人が採れるかも、ということで、今の人と何人か入れ替え!なんてなれば、2人じゃすまないかもしれない。
 
労働者のためを思ってのこの種の規制は、実際のところ労働者のためにならない結果になる恐れがある。
そして、どこでだれが書いていたか忘れたがまったく同意するのは、「最低限の生活保障というのは国がその役割を担うべきで、それは企業の役割ではない」ということだ。
最低賃金を決めるにあたり「生活保護の場合はこうだから」というのを気にしすぎるのもどうかと思ったりする。